こんにちは、プラチナfの椎名です。前回に続きグレングールドに
迫ってみたいと思います。
アリアで始まりアリアで終結する32章のゴールドベルグ
変奏曲はまるでグールドの人生のようです。
32歳で突如コンサート活動に終止符を打ったのには、
何か理由があるのだろうか?
「聴衆がうるさいから」とか、「収録活動に専念するため」とか言われている
が、なぜ32歳なのか?ゴールドベルグ…を意識していたのではないのだろう
か?また、彼が最初のデビュー盤に選んだのもゴールドベルグ…そして、再録しな
いことで有名なグールドが最後に選んだのもゴールドベルグ…、彼の死の前年
に再録されています。
まさに、音楽家としての彼の人生はゴールドベルクで始まりゴールドベルクで
終わったのです。アリアで始まりアリアで終わるこの曲のように。
バッハを愛し傾倒していたグールドとしてはごく自然のことだったのかも
しれません。
そしてバッハを尊敬するグールドの演奏は、あくまでもノンレガート。
バッハ演奏において、彼はダンパーペダルをけして使用しませんでした。
それは、余計なものを省き曲の構造をはっきりとさせる為。
そして、それを追及する過程で、彼の愛機スタインウェイCD318には
次々に改造が加えられました。
又、それとともに彼はソフトペダルを多用してもいるのです。
これもまた同じ目的の為。(ピアノの弦は各音3本づつ張られているのですが
キーをたたくとハンマーが3本同時にヒットする構造になっています。
そしてソフトペダルを踏むとそれが2本になって音がソフトになります。)
が、彼は音を弱めるためではなくハッキリとさせる為に使用しています。
よって、彼のバッハ演奏は軽快かつシンプルで解りやすく現代人には
受け入れやすいのではないのでしょうか。
少し見方を変えると、もともとバッハの鍵盤曲はハプシーコードで
演奏されることを想定して書かれている為、バッハを尊敬するグールドは
ピアノでハプシーコードの様に演奏しているのではないのでしょうか?
しかし、そうだとすると1つ疑問が残ります。
グールドの作品の中には実際ハプシーコードで演奏された曲もあるのですが
なぜか、ピアノの様に演奏しているのです。?????????
おそらく彼自身の中に「ある音」が存在し、ピアノでもハプシーコードでも
オルガンでも変わらない。(実際オルガンもその様に演奏している)
それを極めた結果がスタインウェイCD318、このピアノを彼は長い間
愛用していたのですが、ある時移動中に大破して2度とよみがえりませんでし
た。
晩年はヤマハ(CFモデル)を使用し、2度目のゴールドベルグ…はヤマハで録音
しています。
余談ですが彼は日本びいきで、夏目漱石の「草枕」は愛読書でもあり、中に
書き込みまでしていた様です。グールドの評価は特に日本で高かったらしくそ
う云うことも少しは影響しているのでしょうね。
また、彼が他のピアニストと少し違っていたのはピアニストなら必ずと言って
良い程演奏するショパンやラフマニノフを演奏しませんでした。実際彼は、自
著の中でショパンやリストなどロマン派を、批判してもいるのです。
で、私はショパン作品の演奏が残っていないか探してみたのですが…。
有りました!たった一曲。「ショパンピアノソナタ3番」しかし、この曲は正
式な録音ではなく、カナダ放送協会に残された放送用音源の中に存在したので
す。それが、今ではCD化され発売されているのです。音は昔のアナログです
が、グールド唯一のショパン作品。さっそく購入して聞いてみることに…。
「う~んビミョーウ」。なんかグールドらしくない!これなら、アルゲリッチ
がショパンコンクールに優勝した直後に収録した3番の方が全~然よい!
ショパンコンクールで優勝したアルゲリッチは3番の中で若さを爆発させてい
た。まず疑問、なぜグールドは放送用としてもショパンを演奏したのか?
まあ、ソナタ形式はショパンにしては珍しく、3曲しかない。云わばショパン
らしくない作品。…だからなのか。それともショパンを弾かないグールドに放
送スタッフが(奇)をてらって無理に要請したのか?だがそれを安易に吞むグ
ールドではない。…謎だ!
では、何故グールドはショパンを弾かないのか?ショパン専門のショパン弾き
が居る位なのに…。それはグールドの作品を聞き詰めていくと、言葉ではなか
なか表現できないが理解できるのです。違う!大雑把に云えば「スタイル」が
違うのです。
あの、ショパンピアノソナタ3番、あれはグールド唯一の汚点なのか?何度繰
り返し聞いても解らない!
また逆に、「死ぬのがむしろ遅すぎた位」と批判していたモーツァルトについ
てはピアノソナタを全曲録音しているのですが、なんとその奏法はモーツァル
トファンから大変な批判を浴びました。「モーツァルトの悪い所を直してあげ
る」そう言って楽譜を無視又は変えて演奏していたのです。よくも悪しくも話
題に事欠かなかったグールド。次回彼ならではのエピソードをご紹介いたしま
す。それでは次回又。
SEE YOU!! BOSS
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